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おとなのためのブックレビュー

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絵本は子どもだけのもの?いいえ、おとなになった今だからこそ、新たな感動に出会える絵本も、たくさんあるのです。そんな絵本を、毎月少しずつ紹介していきます。

図書室 / 赤羽

2012年2月

『しろいうさぎとくろいうさぎ』
ガース・ウィリアムズ/ぶん・え
まつおかきょうこ/やく
福音館書店

原題は”The Rabbits’Wedding” けぶるような優しいタッチで描かれた野原に、登場するのは(最後の数頁を除いて)2匹のうさぎだけ。単純なストーリィなので、原書で読むのもおすすめです。愛することのせつなさ、いつまでも一緒にいたいという願い。可愛らしい恋愛絵本として日本では人気がありますが、1958年にアメリカで出版された当時は、異人種間の結婚をテーマにした絵本だと話題になったそうです。気持ちを伝えることをためらって悲しそうな顔をする黒いうさぎ。白いうさぎがその愛を受け入れ、周囲が祝福する・・・ただ甘いだけでない、深い愛を感じる1冊です。

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2012年1月

『まほうのマフラー』
あまんきみこ/作
マイケル・グレイニエツ/絵
ポプラ社

あまんきみこさんといえば『車のいろは空のいろ』など小学校の教科書にも採用されたお話がたくさんありますが、この絵本は外国の画家と組んだめずらしい1冊。絵具を塗り重ねたような重厚な力強い絵の中で、マフラーの緑色が鮮やかにきわだちます。「よくにあうこと」かあさんが巻いてくれたとうさんのマフラー。くじけそうになった時、マフラーに勇気づけられて少しずつ強くたくましくなっていくとむ君。その理由は最後の頁に。「だからお父さん、心配しないで 空の上から、ぼくとお母さんを見ていてね」本を閉じれば、表紙の男の子は、目深にかぶった帽子の下で涙をこらえているかのよう。男の子の心の成長と季節の移ろいが重なり、せつなくも温かい希望の力が感じられる結末になっています。

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2011年12月

『トムテ』
リードベリ/さく
ヴィーベリ/え
やまのうちきよこ/やく
偕成社

『きつねとトムテ』
フォーシュルンド/さく
ヴィーベリ/え
やまのうちきよこ/やく
偕成社

今月ご紹介するのは、ヴィーベリの絵による「トムテ」の絵本2冊。どちらも山内清子訳で、偕成社から出版されていますが、それぞれ異なる作者による散文詩ふうの物語です。トムテとは、北欧の昔話に登場する小人。農家の納屋などに住み、人や動物の暮らしをそっと見守るといわれています。スウェーデンではサンタクロースのような存在でもあり、クリスマスの晩はトムテのためにおかゆを用意します。そのおかゆを、おなかをすかしたきつねにトムテがあたえる『きつねとトムテ』しんしんとふけゆく雪の夜、いつものように家の中を見まわりながら、人の生に思いをはせる『トムテ』やさしく神秘的な絵と、うつくしいリズムの文章で語る北欧の夜の一幕、静けさと温かさが心に満ちてくるような2作品です。

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2011年11月

『ぶどう酒びんのふしぎな旅』
アンデルセン/原作
藤城清治/絵
町田仁/訳
講談社

アンデルセン原作の童話ですが、子どもにはあまりなじみのないものかもしれません。古びたワインの瓶の数奇な運命が、折れた瓶の口を通して語られます。幸福と絶望、出会いと別れを紡ぐ物語を彩るのは、藤城清治の美しい切り絵。画集としても完成度の高い、大人のためのファンタジーにふさわしいこの絵本、読後には芳醇な赤ワインのような余韻をもたらしてくれることでしょう。

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2011年10月

『3びきのかわいいオオカミ』
ユージーン・トリビザス/文
ヘレン・オクセンバリー/絵
冨山房

おなじみ「3びきのこぶた」の立場が逆転。といってもただのパロディではありません。気弱そうなオオカミたちのかわいいこと、ブタの人相の悪いのなんの!けなげなオオカミたちが強固な家を建てれば建てるほど、ブタの破壊力も過激に・・・防犯設備付鉄筋コンクリートの家をダイナマイトで爆破するにいたっては、そんなのあり?!と驚くやらあきれるやら。そんな悪ブタが花の香りに癒される結末は、「北風と太陽」を思い出すようでもあり、人と人あるいは国家間の争いをなくすためにできることを示唆しているようにも思われます。細部まで丁寧にかかれた絵の中に隠された楽しいしかけを見つけるのも、大人の絵本の楽しみかたのひとつ。ウィットに富んだイギリスらしさにあふれた絵本です。

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2011年9月

『おばあちゃんのアップルパイ』
ローラ・ラングストン/作
リンジイ・ガーディナー/絵
白石かずこ/訳

年とったおばあちゃんと一緒に暮らし始めたマーガレット。昔よく作っていたアップルパイも、今は一人で作ることはできなくなり、それでもリンゴの芯がいちばん甘いことは覚えているおばあちゃん。記憶は日に日になくなり、かわいがっていた猫や孫娘の名前まで忘れてしまいます。マーガレットはショックをうけますが、名前は忘れても「あんたはわたしのかわいい子」だということがわかって、にっこりします。最後まで希望と笑顔を忘れない家族の絆、記憶を失っても残る愛を、この本は教えてくれます。

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2011年7月

『よあけ』
ユリ・シュルヴィッツ/作・絵
瀬田貞二/訳
福音館書店

朝まだき、湖のほとりに眠るおじいさんと孫。静寂。さざ波が立つ。少しずつ空が白み始める。詩のような短文が、美しい水彩画にそっと寄り添います。ユリ・シュルヴィッツはポーランド出身の作家ですが、東洋の文芸にも造詣が深く、この絵本は柳宗元『漁翁』という漢詩をモチーフにしているとのこと。少しずつ変わっていく空の色や朝の冷気を感じながら、最後のページをめくったときの感動を・・・

『これは本』
レイン・スミス/作
青山南/訳
BL出版

まさにタイトルどおり「本」の現在・未来形を予感させる斬新な絵本です。携帯小説、ブログ、Twitter、そして電子書籍。パソコンが得意なロバくんは、本がどんなものか知りません。「どうやってスクロールするの?」「マウスはどこ?」本が大好きなサルくんに、次々質問を投げかけます。「これは本だから」困惑しながら説明するサルくん。「読んでみる?」とロバくんに本を渡すと、夢中になって返してくれません・・・ 本ってなんだろう?これがなかなか難問で、奥深い。中高生にもおすすめしたい1冊です。

文学散歩のすすめ
夏休み、文学館では絵本作家の企画展示も。小旅行気分でお出かけはいかがでしょう。

☆鎌倉文学館(由比ヶ浜)
「かこさとしのせかい おはなし・かがく・あそび」 7/16〜9/25

☆神奈川近代文学館(横浜)
「安野光雅展−アンデルセンと旅して」 8/6〜9/25

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2011年6月

『100万回生きたねこ』
佐野洋子/作・絵
講談社

生きること、愛すること。自らの生を選び取ること、家族をもつということ。読む人の立場や心の状態によって、この本のテーマは異なるものになると思います。100万回生きて100万回死んだねこ。愛するものを得て死んだあと「ねこはもうけっしていきかえりませんでした」あなたは、どう感じるでしょうか。

『わすれられないおくりもの』
スーザン・バーレイ/さく・え
小川仁央/やく
評論社

死期を悟ったアナグマが「長いトンネルのむこう」に行ってしまったあと、残された森の仲間たちは悲しみの中から、それぞれが、アナグマの残してくれた贈りものを見つけます。物があふれる現代に暮らす私たちに、お金で買えないもの・形のないものの価値を教えてくれる絵本です。

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2011年5月

『ずーっとずっとだいすきだよ』
ハンス・ウィルヘルム/作・絵
久山太市/訳
評論社

幼いころから一緒に育ってきた愛犬の死をとおして、愛すること、愛を伝えることの大切さ、そして今を大切に生きることを考えさせられる本です。優しい絵と語りに、心が温かくなります。

『ルピナスさん』
バーバラ・クーニー/作
ほるぷ出版

世の中をもっとうつくしくするためにできること、とはなにか。ひとりの力は小さくてもいつか実を結ぶ、静かな感動をおぼえる絵本です。

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今月のことば ライブラリーラボ保存版

おとなのためのブックレビューがタウンニュース記事(「おとなも絵本楽しんで」12月2日号)に掲載されました。